オランダのオーキャンプ

　1883年にオランダ・サイクリスト連盟(ＡＮＷＢ)が設立されました。1910年代にこの連盟が毎月発行している機関誌「カンピオーン」（チャンピオン）にイギリスの「アマチュア・キャンピングクラブ」（ＡＣＣ）が､自転車を使ってキャンプを楽しむ人々の団体として紹介されました。これに興味を持った何人かのオランダ人サイクリストは早速ＡＣＣに入会し、ＡＣＣのメンバーと一緒にサイクルキャンプを行いました。その体験談を「カンピオーン」に載せると、オランダのあちこちでキャンプ愛好者の小さなグループが誕生しました。そうしたキャンプ愛好者がキャンプファイヤーを囲んで談笑しているときに、誰かがキャンパーだけのクラブを作ろうと提案しました。こうして1912年5月５日、オランダ・ツーリスト・キャンパー・クラブ（ＮＴＫＣ）が誕生しました。

　その年、ＮＴＫＣの招待を受けてＡＣＣのメンバー5人がオランダを訪ねました。翌1913年ＡＣＣは32人のメンバーをＮＴＫＣの大会に送り、その翌年にはＡＣＣがＮＴＫＣのメンバーを英国に招待しました。こうしてイギリスとヨーロッパ大陸の間の国際キャンプが幕を開けたのです。

　1932年5月15日、ＮＴＫＣの呼びかけによりオランダのザクセンハイムでキャンピングクラブ会議（Conference of Camping Clubs)が開催され、イギリス、ベルギー、フランス、オランダ、イタリアから11のクラブが参加しました。この会議でＦＩＣＣ「国際キャンピングクラブ連盟」（Federation International　des Clubs de Camping）を設立することが決まり、て翌1933年イギリスのハンプトンコートで第1回ＦＩＣＣ世界大会が開催されました。

: ヨルダンＮＴＫＣ会長

　1940年は第8回ＦＩＣＣ世界大会がオランダで開催されることになっており、ＮＴＫＣは準備を整えていました。しかしその年5月にドイツ軍がオランダに侵攻して、すべてが失われました。しかもＮＴＫＣ会長のドレスデン教授はユダヤ系オランダ人であったために、ドイツ軍に捕らえられて強制収容所に送られました。

　第二次大戦後、強制収容所から奇跡的に生還したドレスデン会長は、1946年11月16日にフランス・キャンピング・クラブの本部で戦後初めて開催されたＦＩＣＣ理事会に出席して、計画されていたＦＩＣＣ世界大会をオランダで開催する意志を表明しました。そして翌1947年8月1日から8月10日まで、ハーレム郊外のヘームステッテで第8回ＦＩＣＣ世界大会が開催されました。財政難と物資の配給制という極めて困難な状況の中で開催されたこの大会には、フランス、オランダ、イギリス、ベルギー、ルクセンブルグ、スイス、デンマーク、イタリア、ポルトガルの10か国から1857人が集まりました。

　戦争の荒廃から復興するに連れて、キャラバン（キャンピングトレーラー）が普及していきました。ＮＴＫＣの中でもキャラバンを使うキャンパーが次第に増えていきました。キャラバニングはテントキャンプとスタイルが異なるので、数が増えるに従い一緒に行動することが難しくなっていきました。そのためキャラバナーたちは1957年にＮＴＫＣから独立して「オランダ・キャラバン・クラブ」（ＮＣＣ）を結成しました。

　1965年、デン・ハーグの北約10kmに位置するワッセナーで第26回ＦＩＣＣ世界大会が開催されました。約1000ヘクタールの森林地帯に設けられた16ヘクタールの大会会場に18か国から集まった1405人のキャンパーは、路上オルガンコンサート、キャンドルパレード、村祭り、インターナショナル・キャンプファイアーなど豊富なプログラムをを満喫しました。

: 第26回FICC世界大会(1965年ワッセナー)

　1989年にはＮＣＣの中でも国際キャンプ活動に熱心なグループが独立してオランダ・ラリー・クラブ（ＲＣＮ）を作り､1990年にＦＩＣＣに加盟しました。このようにオランダには自走式キャンピングカーのオーナーが集まるオランダ・カンペールアウト・クラブ（ＮＫＣ）、同じキャンピングカーブランドのオーナーを集めたクラブ、フィリップスなど大企業を定年退職した人々のクラブなど、独身者だけのクラブなど多種多様なクラブが存在します。